帝国「あ、また悪役を演じるんっすか???wwwww」
帝国「はい、もしもしー」
帝国「あ、はい。物語に出演して欲しい? 喜んで受けますよー」
帝国「……で、どんな役です?」
帝国「あ、また悪役っすか! いえいえ、文句なんて……はい……はい、喜んで」
帝国「ちなみに撮影は……明後日。はい、はい、分かりましたー」
帝国「はい、どーも。ありがとうございまーす!」
ピッ
帝国「ふぅ……また悪役かよ……」
帝国「はい」
監督「まず、帝国さんには圧政を敷いてもらう。重税や強制労働で民を苦しめてくれ」
帝国「重税に強制労働、と」
監督「そこへレジスタンスさんがやってくる」
帝国「ああ、はいはい」
監督「激しい戦闘の末、帝国はレジスタンスに敗れ、滅亡……エンディングというわけだ」
帝国「分かりました」
監督「よろしく頼むよ」
草w
共和国は帝国に滅ぼされてないなら勝ち組だぞ
主役は労農階級と無産政党である社会党である
民意に基盤のない政治は長続きしない
帝国「フハハハ……我は巨大な帝国!」
帝国「強大な軍事力を背景に、他国を次々に侵略、さらには自国民まで苦しめてくれるわ!」
帝国「ほら、重税だ!」
民「稼ぎの10割を持ってかれてしまう!」
帝国「働け働けぇ!」
民「毎日20時間働いて食事はパン一個……タヒんじまう!」
帝国「苦しむがよい! 民など皇帝や貴族を潤すための消耗品に過ぎぬわぁ!」
帝国「むっ……なにやつ!?」
レジスタンス「帝国め、お前の無茶な統治に耐えかね、俺たちは立ち上がった!」
帝国「なにを生意気な……反乱軍など粉砕してくれるわ!」
レジスタンス「行くぞーっ!」
帝国「来ーいっ!」
レジスタンス「これが民の希望を背負った……俺たちの力だーっ!」
帝国「バ、バ○な……帝国が敗れる、とは……」
監督「カーット!」
帝国「あ、どうも」
監督「いやー、よかったよ。やっぱり迫力が違うね。君を悪役にしてよかった」
帝国「そうですか! 嬉しいです!」
監督「じゃ、これ今回のギャラ」
帝国「ありがとうございます!」
帝国「……はぁ」
王国「おーい、帝国じゃないか!」
帝国「あ、王国……」
王国「久しぶり! 今日はなにしてたんだい?」
帝国「仕事があってさ。無事撮影が終わったところさ」
王国「よかったじゃないか。だけど、元気がないようだけど……?」
帝国「……」
帝国「ちょっと……飲まないか?」
王国「どうしたんだよ? なにか悩み?」
帝国「今日も撮影あったんだけど……役がさ」
王国「役?」
帝国「また……悪役だったんだよ。圧政やってレジスタンスに負ける、みたいな」
王国「あー……」
帝国「お前はいいよな。悪役もあるけど、基本主人公サイドって感じだし」
帝国「どうして俺はいつも悪役なんだろうなぁ……」
王国「……」
帝国「だろ?」
王国「僕がオープニングで帝国に滅ぼされるって筋の話もやったことあるし」
帝国「あったあった。で、かろうじて逃げた王子が仲間集めて俺にリベンジするみたいなやつ」
王国「あの物語もなかなかヒットしたじゃない。仕事もずいぶん増えたでしょ」
帝国「そりゃ仕事がないよりある方がいいよ? でも、これだけ悪役ばっかだと気が滅入るよ」
帝国「俺ってそんな悪いことしてるかなぁ……って気分になってくる」
王国「……」
帝国「強大さ?」
王国「うん、主人公が倒すべき敵は大きくて強くないと張り合いないでしょ?」
帝国「そりゃそうだけど。でもそれだったら巨大な王国や共和国が敵でもいいんじゃないか?」
王国「そこは字面の問題でさ。『王』『王国軍』より、『皇帝』『帝国軍』の方が強そうでしょ?」
帝国「まあ、画数も多いしな」
王国「それに帝国って言葉自体にも悪役にしやすい要素があるんだよ」
帝国「字面以外に? どういうことだよ」
王国「これには“複数の民族や地域を支配する国家”って意味がある」
帝国「へえ、そうなのか。全然自覚なかったわ」
王国「つまりだね。帝国って時点でどこかしらの民族や地域を支配してることになるわけ」
王国「軍事力を背景に他国を従属させる政策を“帝国主義”なんていうしね」
王国「もちろん、他国や他民族を従わせることが必ずしも悪かって問われたら難しい問題だけど……」
王国「少なくとも、物語の悪役にすえるにはピッタリってわけさ」
帝国「なるほど……」
王国「最初にもいったけど、強大だからこそってわけ」
王国「だからあまり気にすることはないんじゃない? 強いって認められてるようなもんなんだから」
王国「魔王やドラゴンが大ボスにされるようなもんさ」
帝国「ああ、そうだな……」
王国「久しぶりに飲めて楽しかったよ。じゃあねー!」
帝国「ああ……」
帝国「ん?」
大臣「おや?」
帝国「大臣じゃーん! 久しぶり!」
大臣「これはこれは帝国君、久しぶりだね」
帝国「こんなところで何してるんだ?」
大臣「ああ、物語の撮影が終わったところさ」
帝国「へぇ、どんな役?」
大臣「ハハハ、意地の悪い質問だ。悪役に決まってるだろう」
帝国「やっぱり……俺と同じか」
大臣「ということは君もかね」
帝国「ああ、仕事してきたよ。レジスタンスに滅ぼされた」
大臣「悪しき私が王位の簒奪を図るも、勇敢なる騎士に食い止められるという話さ」
大臣「ちなみに勇敢なる騎士は、姫様と恋仲になってハッピーエンド」
帝国「いいなぁ。俺もそういう役やりてえ。女王国家あたりと併合してえ」
帝国「それにしても、大臣も悪役なこと多いよなぁ」
大臣「まあね。王を操ったり、自らが王になろうとしたり、時には人間ですらないこともある」
帝国「なんでだろうな?」
帝国「俺が強大さゆえ、悪役にされやすいのと同じか」
大臣「うむ、権力を持っていたり、自前の兵力を持っていたりと難敵として君臨することができる」
大臣「それともう一つは……」
帝国「まだあるのか」
大臣「国王を補佐するNo.2というポジションだからだろうね」
帝国「なんでNo.2が敵になるんだよ」
大臣「優秀で善良なNo.1の寝首をかこうとする腹黒い二番手、というストーリーが作りやすい」
帝国「なるほどね……」
帝国「枢機卿か、これまた悪役っぽい奴が来たな」
枢機卿「悪役っぽい奴?」
大臣「今帝国君と我々は悪役になりがちだな、という話をしていたところさ。そこへ君が来たわけ」
枢機卿「これは心外ですね。私に悪役イメージなど……あるかもしれません」
帝国「ところで、枢機卿ってどんな職業だっけ?」
大臣「元々の意味はカトリック教会で、教皇に次ぐ地位を持つ聖職者のことだよ」
帝国「ああ、ここでもNo.2か……悪そう」
枢機卿「悪そうなんて言わないで下さい。傷つきますし、実在の枢機卿に失礼です」
元老院「ふぉふぉふぉ、久しぶりじゃな」
帝国「うわぁ……」
大臣「絶対悪役……」
元老院「いきなりひどい言い草じゃのう」
帝国「なんつうか、腹黒いジジイどもが悪だくみをしてるようにしか見えない」
元老院「絶対“老”の字だけで判定しとるじゃろ。ワシはこの通りジジイじゃけど」
大臣「“元”という文字も、“元凶”を想起させる部分があるねえ」
元老院「んなわけないじゃろ。元は古代ローマの立法、諮問機関じゃよ」
元老院「議員はもちろん特権階級じゃが、議員の中には自ら戦場に赴く者も多く、戦タヒ者も多かった」
元老院「議員は終身にもかかわらず老いたら引退する者もおり、新陳代謝もよかったんじゃ」
帝国「意外だな。100歳ぐらいの爺さんばかりのイメージだった」
元老院「古代ローマでそんなに長生きするのキツイじゃろ」
元老院「ちなみに日本にも元老院はあった。明治期の議会は元老院という名前だったんじゃ」
元老院「1890年(明治23年)に廃止されたがのう」
帝国「へえ、知らなかった」
大臣「君はもうちょっと勉強した方がいいと思う」
帝国「帝国に勉強など必要なし!」
枢機卿「暴君ですね」
大臣「悪役四天王といったところかな」
枢機卿「嫌な四天王ですねえ」
帝国「悪役同士、パーッとどこかで飲まないか?」
枢機卿「それもいいですね。たまには気晴らししましょう」
元老院「ふぉふぉふぉ、四天王会議も悪くないのう」
大臣「帝国がやられたようだな……」
帝国「え、俺が最弱ポジ!?」
帝国「あんなアイドルみたいなツラでレジスタンスとか、ちゃんちゃらおかしいんだよ!」
大臣「そのとーり!」
枢機卿「最近は美少女なことも多いですね」
元老院「少なくともワシのようなジジイが正義ということは絶対ないのう」
帝国「そうなんだよ。こういうイメージの固定化は間違ってる! 差別だ!」
帝国「今こそ帝国がみんなのヒーローになるべきなんだよ! 帝国バンザーイ! バンザーイ!」
枢機卿「帝国さん、ずいぶん荒れてますねえ」
大臣「色々溜まってたんだろうさ。好きにさせてあげよう」
大臣「なにを?」
帝国「俺らみたいな悪役が正義の作品を作るんだよ!」
枢機卿「ほう」
元老院「それも面白いかもしれんのう」
帝国「だろ?」
大臣「しかし、悪役は誰にやらせるのだね?」
帝国「そうねえ。うーん……」
「だったら僕にやらせてくれないか?」
王国「いや、帝国の悩み方が深刻だったからどうしてるのかな……と思ったから」
帝国「わざわざ来てくれたのか。ありがとぉ~!」ガシッ
王国「うわっ、こりゃさらに飲んでるな!」
帝国「本当に悪役を引き受けてくれるのか?」
王国「ああ、僕としても、色々な役をやって経験を積みたいからね」
大臣「我々としても、善玉イメージが強めの王国君が悪役になってくれるのは申し分ない」
枢機卿「ええ、感謝しますよ」
元老院「それでは明日からでも、物語の撮影を始めようかのう」
帝国「うおおおおっ、やるぞーっ!」
帝国「ある王国は民を虐げ、人々を苦しめる残虐な政治を行っていた」
帝国「そこへ立ち上がる正義の帝国! 帝国は大臣、枢機卿、元老院の力を使って」
帝国「王国と王子をやっつける!」
大臣「こういう役をやるのは本当に珍しいかもしれないな」
枢機卿「私もですよ」
元老院「年甲斐もなくワクワクしてきおった」
帝国「よぉし、最高の物語を作るぞ!」
王国「くっ……バレたか!」
王子「なんてことだ! 帝国が介入してくるなんて!」
帝国「貴様らのような悪い国は、我が帝国軍が百万の軍勢をもって叩き潰してくれるわ!」
帝国「ゆくぞォ!」
大臣「はっ、このような王国の存在を許すことはできません!」
枢機卿「我らが僧兵もスタンバイ整っております」
元老院「亀の甲より年の功、王国を潰す策略は練っておるわい」
帝国「頼もしい奴らよ……ゆけい、百万の軍勢! フハハハハハハーッ!」
ワイワイガヤガヤ…
帝国「おおっ、大勢の人間が観に来てくれている!」
大臣「レビューでも好評のようだねえ。星5が多い」
枢機卿「これでやっと……我々の悪役イメージが覆る時が来たのですね……」ウルッ
元老院「長生きしてよかったわい……」
帝国「しかし、なぜだろう? 俺のところに全然ファンレターが届かないんだよな」
帝国「みんな照れちゃってるのかな? だとしても一通も届かないってのは……」
大臣「おーい!」
帝国「おう大臣、どした」
大臣「我々が主役を務めたあの物語をきっかけに……大人気になっているんだ!」
帝国「おお、ついに俺の時代が――」
大臣「王国君が!」
帝国「なんで!?」
帝国軍反応が若い
ファンB「エンディングで滅びましたけど、きっと復活しますよね?」
ファンC「上映中ずっと王国さんを応援してました!」
王国「はぁ、どうも……」
王子「ありがとうございます……」
大臣「こういうことになってしまったのだ……」
帝国「うぐぐ……なんで? 悪役だったのに……!」
大臣「なにしろ百万の軍勢になすすべなく滅ぼされたからねえ」
大臣「今や『続編で王国がリベンジする物語希望』という投書が○到してるらしい」
帝国「判官びいきってやつか……」
大臣「帝国君……」
帝国「だが、いいさ! お客が望むものを御出しするのがプロってもんだ!」
帝国「こうなりゃとことん悪役をやってやる! 枢機卿と元老院も呼んで、新作の撮影開始だ!」
大臣「うむ、そうしようか」
大臣(帝国君、今の君は悪役かもしれんが……ヒーローにも見えるよ)
― 完 ―
作者さん乙でした!
次回も期待してます!
おやすみなさい!
ダークヒーロー路線という手もあるぞ
引用元: https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1630495884/
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